広田照幸『学校はなぜ退屈でなぜ大切なのか』

今年も大晦日になってしまった。

特に書くこともないので、昨年度末に図書館報に書いた文章を転載しておく。書評のようだけど単に専門性を高めようとしない人に対して苛立っている文章ですね。

広田照幸『学校はなぜ退屈でなぜ大切なのか』

 これを読んでいる方は卒業したばかりの2年生か図書好きの1年生、もしくは来年度この欄を担当する先生がほとんどだと思います。全ての方はこれまで教育を受けてきているので、誰もが「教育とは何か」という問いに対してなんとなく語れてしまいます。しかし、それは単に自身の経験をもとに語っているだけに過ぎないので、いくら語り合っても専門的なところまで深まりません。
 最近は専門性をないがしろにして揚げ足を取ったり論点をずらしたり、表面的な知識で中身のないことを語ったりする動画があふれていますが、きちんと議論をするためには前提となる知識が必要になります。しかしながら専門性は簡単に深まるものではなく、一朝一夕に身につくものでもないですし、なにより専門性が身についている人ほど慎重に話をするものです。
 この本の著者の広田照幸先生は教育社会学者ですが、この方が書く新書のほとんどは専門的な話を初学者向けにわかりやすく書いていると思います。私は短期大学の教員として2年間で専門家を育てなければならないため、このような語り口で授業ができたらいいなあといつも思っています。この本は、身近な事例を用いて教育学についてわかりやすく説明されています。例えば、どうして学校は退屈なのかということについて、学校では身近な日常生活から切り離されているものを教わっているため退屈になってしまっていると述べています。
経験だけを頼りに教育については語り得ないということに気づける一冊です。

やっぱり苛立ってますね。来年は穏やかにいこう。

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