児童中心主義と系統主義を学生に伝える

保育者養成をするのに2年間は短い。
そのため、学生が短時間で気づきを得られるよう日々の教材研究が欠かせない。
ある程度分かりやすい話からはじめて行こうとすると、世代差が出てしまう。
例えば、保育の心理学で、乳児の運動機能通過率の話をする。分かりやすく3か月単位にし、3か月で首座り、6か月で寝返り、9か月ではいはい、12か月でつかまり立ち、15か月でひとり歩きと伝えるのだけれど、その際に以前は世界のナベアツの話をしていたが、3年ほど前から伝わらなくなった。

今回の授業の中で、児童中心主義と系統主義の話をするために、「つくってあそぼ」と「ノージーのひらめき工房」を見せてみた。「つくってあそぼ」は今の世代にぴったりで、既に終わったことを知ってショックを受け泣き始める学生もいた。
「つくってあそぼ」はワクワクさんという教師がゴロリという無知無能な存在に対して正解のある制作物を教え込むという系統主義寄りの番組である。一方で、「ノージーのひらめき工房」は、こどものひらめきを元に手段に着目して制作をすすめる児童中心主義寄りな番組である。
学生の多くは「つくってあそぼ」的な活動を正統な保育だと思っているらしい。
一方で「ノージーのひらめき工房」はよくわからないらしい。系統主義は達成目標をもち評価も容易なので、教師にとっては簡単なのだ。結果的に未だに多くの私立幼稚園が系統主義寄りなのは、教師にとって容易という側面と、歴史的な側面がある。系統主義と児童中心主義を軸にすると教育の歴史も分かりやすく伝えられる。
教育というのは全員が受けてきた経験があるから、自分が受けたものが正統的であるという無自覚な認識がある。しかし、現在の幼児教育においては「ノージーのひらめき工房」的な活動を求めているのであり、自分が受けてきた教育は現在の正統的な保育とは違うことに気づくことが大切なのである。