読んだ。
作者はS.D.ハロウェイ。しつけ研究で有名なヘスのお弟子さんです。
日本好きな先生で、これまでも日本の幼稚園についての書籍などを執筆されています。
これまでの「良妻賢母」とは何だったのか、現代の母親はどう考えているのかという問題から始まり、質的・量的研究を通していろいろな示唆を与えてくれます。
しかし、本書では割と子育てを夫婦だけの問題を捉えていて、子育てコミュニティとしての地域の役割の考察がもう少し欲しかったなあというのが率直な感想です。「良妻賢母」の本なので、夫婦の話が中心になってしまうのは仕方ないのですが。
興味深かったのはこの部分
彼女たちが自分たちの努力の成功について、子どもが示す実際の行動にではなく、行動を動機づける規範の内面化(つまり理解すること)を重視している
つまり、「しつけが上手くいった!」と母親が感じるときは、ただ行動が変わったことだけじゃなくて子どもが本心からそう思えているかが大事だととらえているということ。
具体的に例えると、お友達をバシバシ叩いている子どもを叩かないように仕向けられても、子どもが心から「お友達を叩くことは悪いことだ」と思っていないと母親は安心しないということであり、結果的に母親はしつけのハードルを上げて苦しんでしまっているということなのですね。
この指摘は子育てだけでなく、幼児教育の評価のし辛さにも直結していると思う。
他にも
・多くの母親、とりわけ女児の母親が、子どもを大学に通うことを強く望んでいるわけではなかった
・子どもの頃の家庭での社会化の体験が女性が本気で専門職をめざすことをあきらめさせている
・雇用政策が女性を低賃金のパートタイム職に根づかせる
・日本では高等教育が創設されたときから、女性が不利な立場に置かれてきた
などがデータをもとに示されていて、示唆に富んでいました。
以上、メモ